4 min read2026-01-15服
街と服:下北沢篇
下北沢で着る服は、下北沢に選んでもらえばいい。
雨が降ると、少しだけ嬉しくなる街がある。下北沢は、そのひとつだ。晴れの日の下北沢は人が多くて、少し疲れることもある。でも雨の日は、街が静かになる。傘をさす人たちの歩幅が、いつもよりゆっくりになる。
まずCAFE TROIS CHAMBRESに入る。雨の日の純喫茶は格別にいい。窓に雨粒が伝って、店内の薄暗さがより深くなる。ブレンドコーヒーの湯気を眺めながら、ぼんやりと外を見る。急いで行く場所はない。ここにいること自体が、今日の予定だ。
コーヒーを飲み終えたら、本屋 B&Bへ。ビールが飲める本屋として知られているけれど、雨の日はコーヒーのほうが似合う。棚を端から眺めていく。雨の日は客が少ないから、棚の前で立ち止まる時間を遠慮しなくていい。知らない著者の本を手に取って、最初の数行を読む。ここで出会う本は、晴れの日には出会わなかった本だと思うことにしている。
東洋百貨店にも寄る。地下の古着屋街は、雨でも変わらない。いや、むしろ雨の日のほうが落ち着いて見られる。革ジャンの匂い、古いウールの手触り。五感が敏感になっている日は、服の細部がよく見える。BONUS TRACKまで歩いて、屋根のある通路を歩く。雨に濡れた緑が、コンクリートの街に奥行きを与えている。雨の下北沢が好きだ。晴れの日より、少しだけ自分のための街になるから。